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処方箋の付替えの不正請求での取消処分のコラムです。薬局・薬剤師の個別指導・監査は、薬局の指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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薬局・薬剤師の指導監査の実例(8):処方箋の付替えの不正請求

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薬局への厚生局の個別指導・監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。


ここでは、処方箋の付替えが社内調査で明らかとなり、係る不正請求を会社役員が厚生局に自主申告し、その後、個別指導となり、監査が実施され、取消処分となった薬局の実例(不正請求での取消処分)をご紹介します。東北厚生局の令和元年10月付けの取消処分の実例であり、説明のため、事案の簡略化等をしています。

なお、個別指導、監査に臨む薬局・薬剤師の方は、指導監査の基本的な流れや実施状況など記載していますので、まずはこちらのコラム薬局の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

処方箋の付替えの不正請求での薬局の取消処分


 1 個別指導、監査に至った経緯

1 処方箋の付替えの厚生局への自主的な報告
平成29年5月1日、東北厚生局岩手事務所に薬局の役員が来所し、他のチェーン薬局の不正行為のニュースがあり、自薬局でも社内調査を行ったところ、薬局にて、東北管内の当該薬局以外の福利厚生の対象となる職員、家族分の処方箋を平成28年6月から平成29年2月まで集め、実際は他薬局それぞれにて調剤し、薬剤を交付しているにもかかわらず、当該薬局にて調剤を行ったとして、同薬局より調剤報酬請求を行ったと口頭で報告があった。また、薬局は組織改編に伴う開設者変更により、同一の保険薬局ではあるものの、届出上、平成28年9月30日に廃止、同年10月1日新たに保険薬局として新規指定となっているが、調剤基本料の施設基準について、開設者変更後の新薬局においては、開設者変更前の旧薬局の平成28年6月から同年8月の3か月実績にて再度判断しなければならないところ、前記の不正な処方箋の集約方法を用いて、実際には3か月実績で集中率が95%を超えているにもかかわらず、95%以下として、開設者変更後の新薬局において、「調剤基本料3」ではなく「調剤基本料1」の届出を行い、「調剤基本料1」を平成28年10月から平成29年3月まで引き続き算定していたとの報告が併せてあった。このことから、社内調査の詳細、実際の処方箋と調剤の流れ、薬歴等の作成状況等の詳細な経過を文書で再度報告するよう指示した。

【コメント】
本ケースでは、個別指導の実施がされていない状態で、薬局側から積極的に厚生局に不正請求について報告をしています。このようなケースの場合、積極的に報告をした薬局側としては、厚生局の寛大な取扱いを期待するところと思われますが、現実には、本ケースでは、取消処分に至っています。

2 不正請求の報告書の提出
平成29年5月16日に詳細な報告として、薬局より「報告書」の提出があり、その後、平成29年6月9日に中間報告として、「中間報告書」及び調剤済処方箋、調剤録及び薬剤服用歴の記録の写し等、関係書類の提出があった。

【コメント】
厚生局に不正請求について積極的に報告をした場合は、厚生局から、関係資料の提出等を求められることがあります。本ケースでは、まさにそのような流れとなっています。

3 個別指導での不正請求の確認
上記報告を踏まえ、平成29年7月21日に個別指導を実施し、上記の「中間報告書」のとおり、不適切な処方箋の集約及び調剤報酬の不正請求の事実を確認するも、時間内に全ての確認が終了できなかったため、個別指導を中断した。

【コメント】
個別指導が実施され、かつ、当該指導が中断となっていますので、厚生局としては、監査の実施をこの時点で既に念頭においていたと思われます。

4 不正請求の最終報告書の提出
平成29年8月3日に最終報告として、薬局より「不適切請求に関する最終報告書」の提出があった。

【コメント】
上記のとおり、本ケースでは、個別指導が中断になった段階において既に、監査の流れとなっていたと思われ、この最終報告書の提出では、その監査への流れを変えることはできなかったものと考えられます。

5 他の関連薬局への個別指導での処方箋の付替えの確認
薬局に処方箋を送付したと報告のあった全24保険薬局について平成29年7月から同年11月までに個別指導を実施し、実際には他薬局において調剤を行い、薬剤を交付していたにもかかわらず当該薬局に処方箋を送付した事実を確認した。

【コメント】
24の薬局が処方箋を送付したとの報告があったとのことであり、厚生局により個別指導で確認がなされています。

6 個別指導の中止、監査の実施
以上により、平成30年1月12日付け通知により個別指導を中止し、監査要綱の第3の1及び2に該当するものとして、個別指導の中止通知を監査の実施通知と同封のうえ送付し、平成30年1月29日から同年9月26日まで計12日間の監査を実施した。

【コメント】
中断していた個別指導の中止の通知と監査の実施の通知は、同時に行われることがあり、本ケースではそのようになっています。

 2 取消処分の理由と不正請求額

1 取消処分の主な理由
第一に、実際には、同一開設者の他の保険薬局で行った調剤を当該保険薬局で調剤を行ったものとして、調剤報酬を不正に請求していた。第二に、「調剤基本料1」の施設基準(特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が9割5分以下)に適合していないにもかかわらず、同一開設者の他の保険薬局で行った調剤を当該保険薬局で調剤を行ったものとして操作し、本来は「調剤基本料3」の施設基準で届出しなければならないところ、「調剤基本料1」の基準に適合しているとして施設基準の虚偽の届出を行い、調剤報酬を不正に請求していた。

【コメント】
処方箋の付替えに関連して、処方箋の集中率に関して本来は調剤基本料3の施設基準であるにもかかわらず調剤基本料1の施設基準で届け出られていたことが取消処分の理由の一つとされています。

2 不正請求の金額
不正請求として、6088名分6088件242万461円が、監査で判明しています。ただし、この件数・金額は、監査で判明したもののみであり、最終的な確定した金額ではないことに注意が必要です。


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薬局の個別指導と監査のコラム


薬局の個別指導と監査のコラムの一覧です。
処方箋の付け替えの不正請求の実例の他、多数のコラムがございます。
個別指導や監査の際に、また日常の運営にご活用いただければ幸甚です。

 1 個別指導と監査の対応法

1 薬局の個別指導と監査

 2 薬局・薬剤師の指導監査の実例

1 情報提供による薬局の個別指導

2 薬局の無資格での調剤

3 薬局・薬剤師の監査の拒否、欠席

4 虚偽の日付の処方箋での薬局の不正請求

5 別の薬局の調剤での不正請求

6 医院・クリニックの個別指導からの薬局監査

7 刑事事件の逮捕、有罪判決での薬剤師の取消

8 処方箋の付替えでの薬局の不正請求

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