弁護士鈴木は、中小企業のM&A・事業承継に力を入れています。
ここではまず中小企業庁の公表資料「事業承継ガイドライン(平成28年12月,中小企業庁)」の記載を引用(必要に応じ弁護士鈴木が適宜編集修正等)し、M&A、事業承継の重要性をご説明します。その上で特設ページ「M&A 弁護士 .com」のコラム一覧をご紹介します。M&A・事業承継を検討されている方は、ご参考いただければ幸いです。
中小企業の重要性
中小企業が経済・社会の基盤を支える存在であることは、改めて指摘するまでもありません。中小企業は日本の企業数の約99%、従業員数の約70%を占めており、地域経済・社会を支える存在として、また雇用の受け皿として極めて重要な役割を担っています。
また、中小企業の中には時代の先駆けとして積極果敢に挑戦し、その過程で生み出したアイディア、技術やサービス等を武器として、大企業と渡り合い、あるいは新たな市場の開拓に成功する企業も存在し、経済の活性化の一翼を担っているといえます。
このことは、小規模事業者についても同様です。小規模事業者は所在する市区町村や近隣自治体への商品販売の割合が多いなど、特に地域における商品・サービスの提供主体として欠くことのできない役割を担っています。一方、他者の提供する商品やサービスを購入する消費者の立場も併せ持っており、小規模事業者を介した循環型地域経済を形成しています。
中小企業の現状と経営者の高齢化
「中小企業白書(2016 年版)」によれば、経常利益が過去最高水準を記録するなど景況感は改善傾向にあり、賃金も上昇傾向が続くなど総じてみれば緩やかな回復を実現しているとされています。
一方で、中小企業の数については、1999年から2015年までの15年間に約100万社減少しており、ピークであったリーマンショック後も緩やかではありますが中小企業数は減少傾向にあります。
これと同時に、経営者の高齢化も進んでいます。経営者交代率は長期にわたって下落傾向にあり、昭和50年代に平均5%であった経営者交代率は、足下約10年間の平均では3.5%に低下、2011年には2.46%まで落ち込んでいます。これに 伴い全国の経営者の平均年齢は59歳9ヵ月と、過去最高水準に到達しています。
経営者交代率が長期にわたり下落傾向にあることは、多くの企業において経営者の交代が起こっていないことを示しています。その結果として、1995年頃には47歳前後であった経営者年齢のボリュームゾーンも2015年には66歳前後になっています。
中小企業経営者の引退年齢は規模や企業の状況にもよりますが平均では67〜70歳程度であるため、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることが想定されます。
中小企業における事業承継の現状
1 後継者確保の困難化
日本政策金融公庫総合研究所が2016年に公表した調査によれば、調査対象企業約4000社のうち60歳以上の経営者の約半数(個人事業主に限っていえば約7割)が廃業を予定していると回答しています。そのうち廃業を予定している企業に廃業理由を聞いたところ、「当初から自分の代限りで辞めようと考えていた」(38.2%)、「事業に将来性がない」(27.9%)に続いて、「子供に継ぐ意志がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」といった後継者難を挙げる経営者が合計で28.6%に達しています。
この背景には、近年の息子・娘の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がりや、足下の業績から予測される自社の将来性が不透明であること等、事業承継に伴うリスクに対する不安の増大等の事情があると指摘されています。
なお、この調査では、廃業予定企業であっても、約3割の経営者が、同業他社よりも良い業績を上げていると回答し、今後10年間の将来性についても約4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答しています。このことは、廃業予定企業が必ずしも業績悪化や将来性の問題のみから廃業を選択しているわけではないことを示しています。
こうした企業が円滑に事業承継を行うことができれば、次世代に技術やノウハウを確実に引き継ぐとともに、雇用を確保し、地域における経済活動への貢献を続けることにもつながります。
2 親族外承継の増加
後継者確保の困難化等の影響から、近年、親族内承継の割合の減少と親族外承継の割合の増加が生じています。
2015年に中小企業庁が実施した調査によれば、在任期間が35年以上40年未満(現経営者が事業を承継してから35年から40年経過している)の層では9割以上が親族内承継、すなわち現経営者は先代経営者の息子・娘その他の親族であると回答しています。
一方、この調査では在任期間が短いほど親族内承継の割合の減少と従業員や社外の第三者による承継の増加傾向が見られ、特に直近5年間では親族内承継の割合が全体の約35%にまで減少し、親族外承継が65%以上に達しているとの結果が示されています。
早期取組の重要性
かならずしも業績に問題のない中小企業が廃業の道を選んでしまう実態が存在します。そのような中小企業がやむを得ない廃業に至ることなく、円滑な事業承継を実現するためには、早期に事業承継の計画を立て、後継者の確保を含む準備に着手することが不可欠です。
現に、中小企業経営者の高齢化が進んでいる状況の中、実際に準備に着手している企業は70代、80代の経営者ですら半数に満たない状況です。準備に着手していない中小企業の中には、様々な事情から実際の取組に移ることができていない中小企業の他、そもそも事業承継に向けた準備の重要性を十分に認識していない中小企業も多数存在しているものと考えられます。
後継者の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5年〜10年程度を要することから、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえると、60歳頃には事業承継に向けた準備に着手する必要があります。
事業承継には明確な期限がないことから、差し迫った理由、例えば健康上の問題等がなければ、日々の多忙さに紛れ、対応を後回しにしてしまうことはやむを得ない側面もあります。しかし、経営者の交代があった中小企業において、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いとの報告もあり、事業承継を円滑に行うことができれば事業の成長の契機となります。その反面、失敗すれば事業の継続自体も危ぶまれる可能性があります。
このことから、中小企業経営者が、自身の経営者としての責任において向き合わざるを得ない課題が事業承継なのです。
M&A・事業承継のコラム(M&A 弁護士 .com)
1
事業承継の類型:親族内承継 従業員承継 M&A
・ 親族内承継、役員・従業員承継
・ 社外への引継ぎ(M&A等)
2
事業承継の構成要素:人(経営) 資産 知的資産 ・ 事業承継の3要素
・ 人(経営)の承継 等
3
事業承継の進め方(1):ステップ1・2
・ 事業承継に向けた準備の必要性の認識
・ 経営状況・経営課題等の把握(見える化)
4
事業承継の進め方(2):ステップ3
・ 事業承継に向けた経営改善
・ 磨き上げ
5
事業承継の進め方(3):ステップ4・5
・ 事業承継計画の策定(親族内・従業員承継)
・ M&A等のマッチングの実施(社外引継ぎ)
6
ポスト事業承継:成長と発展 ・ 事業承継を契機とした新たな取組み
・ 経営者の年齢と経営の特徴 等
7
事業承継を断念し廃業する場合 ・ 廃業の選択肢
・ 廃業時に生じ得る諸問題 等
8
親族内承継のポイント
※ 5つのコラムに分けて解説しています。
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親族内承継(1):後継者の選定・育成
・ 後継者の選定・育成
・ 親族・従業員との調整
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親族内承継(2):事業承継税制、退職金の活用
・ 暦年課税贈与
・ 非上場株式等の事業承継税制
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親族内承継(3):従業員持株会、遺言の活用
・ 安定株主の導入(従業員持株会、取引先等)
・ 遺留分に関する民法特例
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親族内承継(4):買取資金の調達、名義株の整理
・ 自社株買いに関するみなし配当の特例
・ 所在不明株主の整理
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親族内承継(5):保証・担保の承継、資金調達
・ 経営者保証に関するガイドライン
・ 事業承継時の金融支援(経営承継円滑化法)
9
従業員承継のポイント
・ 資金調達(MBO・EBO)
・ 株式の分散の防止 等
10
M&Aのポイント ・ M&Aの代表的な手法
・ M&Aの企業評価 等
11
事業承継での種類株式の活用
・ 事業承継での種類株式の活用方法
・ 種類株式の導入手続き 等
12
事業承継での信託の活用 ・ 信託の種類と事業承継における機能
・ 信託の利用方法 等
13
事業承継での生命保険、持株会社の活用 ・ 生命保険の活用
・ 持株会社の設立
14
個人事業主の事業承継
・ 会社形態の承継との違い
・ 後継者人材バンク 等
15
会社の経営の失敗、倒産の実例紹介 ・ 製造業の経営の失敗の実例
・ 破産の弁護士費用